ここで緑内障と遺伝を考える前に、憂慮する事柄があります。緑内障とは単一な病気ではなく、様々な原因で起こる病気の集まりを言います。
ですから、緑内障の原因となる病気があるような時には、緑内障としての遺伝はあまり問題ではなく、その原因となった病気が遺伝するかどうかということに依存していきます。
緑内障と遺伝とを考えさせるいくつかの証拠があります。
1つは、家族的に緑内障の方がいる家系がある事です。特に、親子3代まで確認されれば遺伝が濃厚となってきます。
2つ目は、緑内障はいくつかのタイプに区分されますが、その区分の割合が国によって違うので、民族学的な遺伝があるということです。
最近の緑内障の遺伝の研究は著しく進歩し、かなりのところまで解明されました。この中で期待できるのは緑内障遺伝子診断ですが、診断を依頼する前にいろいろな問題があることを知る事が大切です。代表的な問題を列記します。
- たとえ遺伝子を持っていても、発症するとは限らない。
- 緑内障には色々なタイプがあり、すべての緑内障には当てはまらない。
- 親子であるかの診断も同時にわかってしまうために、必ず患者さんの同意が必要。
- 遺伝形式が多様化している。
- まだ治療にはいたらない。
現在のところ、緑内障すなわち遺伝病という考えは正しい表現ではありません。中には遺伝を強く疑う家系があると考えた方がよいでしょう。多くの症例では単発的に発生しています。
ここで重要なことは、“多くの緑内障は末期まで症状がない”ので、もし家族で緑内障の方が見つかったら、遺伝を心配するより、これをよい機会と考え、家族全員が緑内障の検査を受けられ、緑内障の早期発見に努めることです。