緑内障治療薬

緑内障点眼薬は眼球の中を流れる水(房水)の眼球内で産生する量を減らす作用のものと、房水を眼球外へ排出しやすくする作用のものとに大きく2つに分けられます。そしてこれらの眼圧下降作用に加え、眼血流改善作用や神経保護作用などを考慮して選択します。
それぞれさらに細かく分類され、作用の違ったものを組み合わせて実際に治療にあたります。
薬品には、一般名と商品名とがあります。一般名は薬剤そのものの科学的な名前で、商品名は薬品メーカーが付けた名前です。商品名の方が親しみやすいのですが、後発品のある点眼剤は、メーカーによって違う商品名がつけられていますので、大変混乱しますのでここでは一般名を挙げて説明していきます。

ピロカルピン
歴史的に古い薬剤ですが、唯一の縮瞳剤(瞳孔が小さくなります)です。房水の流出口を拡げる作用があります。
副作用は近視化、白内障促進、暗黒感、眼痛、頭痛などです。
今では使用される機会は非常に少なくなっていますが、症例によっては大切な薬剤になります。

エピネフリン
これも歴史的な薬剤です。このタイプも流出口からの房水の流れを促進します。
副作用は眼瞼アレルギー、結膜アレルギー、網膜浮腫などです。

ピバレフリン
エピネフリンの仲間ですが、エピネフリンよりも少量の薬剤で眼球の中に移行しやすい性質があり、さらにエピネフリンの副作用を軽減したものです。

チモロール
この薬剤は世界的にも1、2を争う使用頻度で多くの緑内障患者さんが助かっています。眼圧の下がるメカニズムは房水の産出を抑制します。
副作用の報告としては、心臓に作用し、脈拍数減少、気管支収縮、うつ傾向、記憶障害、高脂血症、血糖値への影響、眼瞼アレルギー、結膜アレルギー、角膜上皮障害などです。

ラタノプロスト
有名な商品名はキサラタンです。チモロールより強い眼圧下降剤です。今のところ全身的副作用はない様です。
副作用は、虹彩の色素沈着(虹彩が黒くなります)、睫毛が長くなる、瞼の色が黒くなる、角膜上皮障害、ヘルペス性角膜炎の再発、網膜浮腫、低眼圧(眼圧が下がりすぎる)などがあります。

トラボプロスト:
ラタノプロストの仲間で、作用機序は同じです。副作用も同じですが、角膜に優しい対応がされています。このグループの特徴ですが、実際の眼圧下降には個人差があります。

タフルプロスト:
これもラタノプロストの仲間です。これも角膜に優しく、防腐剤フリーの使い捨てタイプもあります。

ビマトプロスト
これもラタノプロストの仲間です。上記種類の点眼剤はいずれも眼圧下降が強いのが特徴ですが、その効果に個人差があります。

ドルゾラミド
商品名はトルソプトで、1日3回点眼です。人によっては1日2回でも同じ効果が得られるという報告もあります。
房水の流入を減少させるタイプの薬剤で、同じメカニズムを持つこれまでのグループとは全く違う眼圧下降機序をもっています。ですから、別のタイプの点眼剤と組み合わせる治療法に期待が持たれています。
昔からこの薬剤の内服薬があり、非常に有効な眼圧下降剤として緑内障治療では重要なのですが、副作用が色々あるのが問題でした。この内服剤の点眼薬といえます。
今のところ全身的な問題に関しての報告はないようです。

ブリンゾラミド
「ドルゾラミド点眼液」と同じ仲間で、後で開発されたものです。1日2回点眼です。使用は「ドルゾラミド」と同じような効果が得られます。

ウノプロストン
商品名はレスキュラ。ラタノプロストの親戚で、ラタノプロストに比べ少し眼圧下降力は弱いのですが、血流増加作用の報告が多く、特に正常眼圧緑内障の治療に期待が持たれています。
副作用は、角膜上皮障害、虹彩色素沈着です。

レボプノロール
商品名はミロルです。1日1回点眼のチモロールとお考えください。チモロールに比べて血流増加作用が期待されています。
副作用は、チモロールと基本的に同じですが、全身性の影響はチモロールよりは少ないようです。

アプラクロニジン
商品名はアイオピジン。非常に強い眼圧下降力を持っています。今のところ、レーザー治療後の一時的眼圧上昇予防の使用に限られています。

ニプラジロール
商品名はハイパジールコーワです。チモロールの作用に血流改善作用を加えたものです。
副作用はチモロールに準じますが、全身的な疾患のある人でも比較的安全に使用できます。

ブナゾシン
商品名はデタントールです。1日2回の点眼です。眼圧下降機序が他の薬品と少し違うために、それらの薬品と併用することによってさらなる眼圧下降が期待でき、血流の増加の臨床研究も進んでいます。

チモロールGS
商品名はチモプトールXE。中身はチモロールと同じですが、基材を改良して粘性を持たせ1日1回点眼が可能になっています。

WP934
商品名はリズモンTG。チモロールGSと同じで、これも1日1回点眼です。チモプトールXEとは違った機序で粘性を持たせています。
副作用はチモロールに準じます。
チモロールGSもWP934も1回点眼ですから、全身への移行はチモロールと比較すると少ないのが特徴です。

カルテオロール
これもチモロールの仲間ですが、比較的副作用の少ないのが特徴で眼圧下降以外に血流改善作用に期待が持たれています。

ベタキサロール
商品名はベトプティックです。これもチモロールの仲間ですが、チモロールの持っている全身への影響を改善したものです。また、血流改善作用や神経保護効果が期待できることも特徴です。
副作用はチモロールに準じますが、比較すると報告は多くありません。

リパスジル
グラナテックと言いますが、平成26年末から使用できるようになった一番新しい点眼剤です。別名ROCK阻害剤とも言います。一過性の結膜充血がありますが、ほとんどの緑内障点眼薬が房水を後方ルートに導いたり、房水産生を抑制するのに対して、いわゆる本来のルートであある前方ルート誘導する作用がありますので、単剤はもちろんですが、他の違った作用機序を持った点眼剤との同時使用が期待されます。