外来で診ていますと、視力検査の結果が前回より悪くなっているために患者さんが心配になることが少なくありません。
視力検査の原理を説明しますと、明らかにわかるような大きな指標を提示して、次第に小さな指標に変えていきます。ということはある程度以上の小さな指標になりますと、わからなくなってしまいますね。この明らかにわかる指標とまったく判断ができない指標との境界を求めることが視力検査なのです。ですから、境界近くになりますと、見えたり見えなかったりするはずです。視力検査では5個の同じ大きさの指標を提示するのですが、5個のうち3個の指標が見えて正解であれば、その指標はパスしたとされます。逆に5個の中の2個以下しかわからなかった場合は不正解とし、その大きさの指標は見えなかったとされます。この時、指標を小さくしていき、5個の中の3個以上見えたところの指標サイズがあなたの視力になるのです。
ようするにこの5個の中の3個見える境界は、確率で示されますので、毎回絶対的なものではなく、測定のたびに変動するのが普通なのです。
本当に病的に視力低下があれば問題ですが、疲労の影響や検査の不慣れなどが原因となっていることがけっこうありますので、すぐに不安にならず担当の眼科医の判断を待ちましょう。
視野の結果は変動する?
本文でも述べましたが、視野検査の結果は疲労や検査の不慣れにより、けっこう変動します。言い換えれば100回の視野検査でも100通りの結果で出るということです。緑内障の進行の判定や進行速度の判定にはこの視野検査が不可欠ですが、測定するたびに、結果の変動に一喜一憂しないようにしてください。複数の視野検査の結果を使って、統計学的な方法により、総合的に眼科医が判断するものなのです。
一日の中の眼圧の変動の実際
現在、患者さん自身で眼圧を測定できる簡単な機械がありますが、これを使って数日間、ご自宅で測定していただきました結果です。実際に記録していただいた表で、非常に見にくいので申し訳ありません。簡単に解説しますと、表の下半分にそれぞれの時刻に何をしたか、たとえば、風呂に入った、お酒を飲んだ、食事をした、運動をしたなどの項目の記載があります。表の上半部に測定した眼圧をグラフにして記録しています。グラフが2つあるのは両眼を測定したためです。ほぼ2日分の測定ですが、これによると、早朝が高く、日によってけっこう変動しているのがわかります。この変動のパターンは個人差があります。しかしながら、ここで使った自分で測定できる眼圧計は非常に使うのが難しく、残念ながら今では使われていません。

新しい緑内障点眼薬
現在では多くの点眼剤が使えるようになり、患者さんにとってはありがたいことになりました。しかし、全ての点眼剤を全部処方することは不可能です。
現実的には2ないし3種類ぐらいしか点眼はできません。
したがって、患者さんにどの点眼剤を使うかを今まで以上に慎重に考えなければならなくなりました。
また、新しい点眼剤は臨床治験では副作用はほとんど問題なかったとしても、治験の対象になった人は緑内障としては軽い状態で全身的には健康な人がほとんどです。実際に使われる場合の対象の人にはいろんな状態の人がいるので、副作用の発現には注意しなければなりません。
日本眼科学会や日本緑内障学会ではこれらの点眼剤の副作用に関する報告が多数出ています。
とにかく、担当の先生から十分に説明を受け、メリットとデメリットを知った上で使う姿勢が大切です。
現実的には2ないし3種類ぐらいしか点眼はできません。
したがって、患者さんにどの点眼剤を使うかを今まで以上に慎重に考えなければならなくなりました。
また、新しい点眼剤は臨床治験では副作用はほとんど問題なかったとしても、治験の対象になった人は緑内障としては軽い状態で全身的には健康な人がほとんどです。実際に使われる場合の対象の人にはいろんな状態の人がいるので、副作用の発現には注意しなければなりません。
日本眼科学会や日本緑内障学会ではこれらの点眼剤の副作用に関する報告が多数出ています。
とにかく、担当の先生から十分に説明を受け、メリットとデメリットを知った上で使う姿勢が大切です。
手術を優先
英国の緑内障専門家の間で言われだしたことですが、緑内障を見つけたら、始めから手術を行うべきだとの意見があります。
理由は薬物治療を行い、レーザー治療を行ってから手術を行うと手術の成績が落ちるからだということです。
これは、長期にわたる薬物治療は手術後の傷の治りを早め、結果として緑内障の手術成績を落とすということから出てきた考えです。
確かに、私も若い患者さんに対して薬物があまり反応しなかったために早期に手術を施行し、現在でも全く薬物なしで良好な結果を得ているという経験があります。
ですから、私もこれには一応賛成ですが、手術には100%の安全はありませんし、緑内障手術の宿命ですが、一時的にしろ術後の視力が低下することもありますから、全ての患者さんに対して手術治療を優先することには反対です。
理由は薬物治療を行い、レーザー治療を行ってから手術を行うと手術の成績が落ちるからだということです。
これは、長期にわたる薬物治療は手術後の傷の治りを早め、結果として緑内障の手術成績を落とすということから出てきた考えです。
確かに、私も若い患者さんに対して薬物があまり反応しなかったために早期に手術を施行し、現在でも全く薬物なしで良好な結果を得ているという経験があります。
ですから、私もこれには一応賛成ですが、手術には100%の安全はありませんし、緑内障手術の宿命ですが、一時的にしろ術後の視力が低下することもありますから、全ての患者さんに対して手術治療を優先することには反対です。
緑内障でない緑内障
これは緑内障と全く同じ所見(眼底と視野の変化)を示すが、緑内障ではない病気のことをいいます。
脳の下垂体近くにできた腫瘍や、過去に頭に放射線を浴びる機会があったとか、出産時に大量の出血があったという方の中で緑内障と同じ所見を呈することがあります。
私たちはこれを緑内障ではないということで、“偽緑内障”と呼んで真の緑内障と区別しています。
緑内障が疑われてCTやMRIで頭の断層撮影をとる理由はここにあります。
これを治療する場合は元の病気に対して行われます。ですから、緑内障としての治療は原則的には行いません。
脳の下垂体近くにできた腫瘍や、過去に頭に放射線を浴びる機会があったとか、出産時に大量の出血があったという方の中で緑内障と同じ所見を呈することがあります。
私たちはこれを緑内障ではないということで、“偽緑内障”と呼んで真の緑内障と区別しています。
緑内障が疑われてCTやMRIで頭の断層撮影をとる理由はここにあります。
これを治療する場合は元の病気に対して行われます。ですから、緑内障としての治療は原則的には行いません。
眼圧の正常な緑内障
これまで緑内障について説明してきました。なぜ緑内障になるのかというと、それは眼球の中の圧力(眼圧)が高くなって、眼球内の重要な組織が障害を受けるということでした。
しかし、話が混乱するので説明を避けてきましたが、もう1つの機序があります。
眼圧が正常であるにもかかわらず、眼圧が高くなる緑内障と同じような障害を示すグループがあります。
歴史的にはかなり前から報告はあったのですが、意外にその数が多いことがわかりました。1988年に実施された日本における緑内障に関する疫学調査の結果は世界で緑内障に対する考えに強い影響を及ぼすことになったのです。
その調査結果は40歳以上の人100人の中で緑内障は3.6人、そのうち眼圧の高くなるタイプは0.58人で、眼圧の正常な緑内障は2.04人でした。
2002年には岐阜県の多治見市で同じ様な緑内障疫学調査が行われ、この結果では正常眼圧の緑内障の人が100人に対し6人くらいいることが判明しました。眼圧の正常なタイプは従来から言われてきたタイプの約3倍以上いることになります。
緑内障の治療の根本は眼球の圧力を下げることですが、元々その圧力が低いため今までの治療に対する考え方では不十分であることがわかったのです。
そこで、眼圧を下げる方法、視神経の血流を改善する方法、視神経を障害から保護する方法の3段構えで治療にあたります。
しかし、この3つの治療の中で、眼圧下降法しか臨床的に効果のあることが確認されていません。
しかし、話が混乱するので説明を避けてきましたが、もう1つの機序があります。
眼圧が正常であるにもかかわらず、眼圧が高くなる緑内障と同じような障害を示すグループがあります。
歴史的にはかなり前から報告はあったのですが、意外にその数が多いことがわかりました。1988年に実施された日本における緑内障に関する疫学調査の結果は世界で緑内障に対する考えに強い影響を及ぼすことになったのです。
その調査結果は40歳以上の人100人の中で緑内障は3.6人、そのうち眼圧の高くなるタイプは0.58人で、眼圧の正常な緑内障は2.04人でした。
2002年には岐阜県の多治見市で同じ様な緑内障疫学調査が行われ、この結果では正常眼圧の緑内障の人が100人に対し6人くらいいることが判明しました。眼圧の正常なタイプは従来から言われてきたタイプの約3倍以上いることになります。
緑内障の治療の根本は眼球の圧力を下げることですが、元々その圧力が低いため今までの治療に対する考え方では不十分であることがわかったのです。
そこで、眼圧を下げる方法、視神経の血流を改善する方法、視神経を障害から保護する方法の3段構えで治療にあたります。
しかし、この3つの治療の中で、眼圧下降法しか臨床的に効果のあることが確認されていません。